蔵々窯 上天草市『趣味と陶芸の狭間で。その生き方全てが作品へとつながっていく。ふるさと維和島の桜の名所でひっそりと創作活動に向き合う。蔵々窯 許斐良助さん』私のシゴトバvol.15

取材🎤文章💻撮影📸 : 太田弘樹(一部写真はご提供いただきました)

趣のあるフォルムのカップ。磁器ならではの軽さ、独特なオフホワイトな風合いが魅力です(非売品)。

窓から春の柔らかな光りが差し込む工房には大きな窯が二つ、静かにその時を待っています。
〇ふるさとで開窯して34年。維和桜・花公園内に静かに居を構える窯元があります。
上天草市大矢野町。天草一号橋を渡り、大矢野ショッピングプラザキャモンの交差点から左折し、上天草高校方面へ。その後、案内板に従ってさらに橋を二つ渡ると「維和島」に到着します。維和島の山頂付近には約100本の桜の木が立ち並び、満開の時期ともなるとピンク色の花びらと、その奥に広がる海や島々が織りなす素晴らしい景色を望むことができ、毎年多くの観光客を楽しませてくれます。そんな維和桜・花公園の駐車場内にひっそりと佇む工房兼ギャラリー「蔵々窯」を営むのが、今回ご紹介する陶芸作家・許斐良助さん68歳、この場所で開窯して34年目を迎えます。そんな許斐さんが手掛ける作品は、天草陶石を材料にした自然の風合いを生かしたどこか温もりのある味わいと、他にはないその独創性の高い作風から、多くの陶芸ファンを魅了してやまないといいます。

木々に覆われたジブリの雰囲気を感じさせる趣のある建物。この場所に開窯して34年目を迎えます。
〇素晴らしき多彩な趣味の世界と、ふるさとの自然溢れる環境こそが最高の創作現場。
周りを木々に覆われた趣のある建物、それはまるでジブリ映画の雰囲気を感じさせる佇まいです。扉を開けて中に入るとさらにビックリするのが、目の前に広がる素晴らしき多彩な趣味の世界。棚に並べられたレコードの数々に、マウンテンバイク、ギター、木目がキレイな大きなテーブル、そして品良く飾られた器の数々。一見窯元のギャラリーとは思えないcafeのような雰囲気、しかも店内に漂うcoffeeのなんとも心地良い香りがさらにそんな気持ちへとさせてくれます。まさにここは許斐さんの“好みなもの”で溢れた場所になっています。

扉を開けるとカフェの様な空間が広がっています。作品よりも目立つものが一杯並んでいます(笑)。

小皿からカップ・花瓶・プレート・オブジェ・学生時代に描いた自画像などが品良く飾られた一角。
『ここで窯を開いて34年目ですかね。最初は陶器メインだったんですが、その後、天草陶石を使った磁器に変えました。ここで始めた理由ですか?維和島が故郷というのもありますが、当時誰も来ないような自然溢れるこの環境で静かに向き合えるかなと思って。今は賑やかになっちゃいましたが(笑)。』
そう話す許斐さんに案内されて向かった先は工房でした。梁がむき出しになったどこか懐かしい雰囲気。それもそのはず、なんとこの建物はもともと小学校の校舎だった建物を移築したものだそうです。
『小学校時代に通っていた思い出のこの建物が、今、私の工房です。感慨深いものがありますよね。』
そんな元学び舎だったというこの建物、そして自然溢れる故郷という環境が許斐さんの創作意欲を掻き立ててくれているそうです。そんな工房の片隅で作品作りを拝見できるのかと思いきや、おもむろにコーヒー豆の焙煎を始めた許斐さん(笑)。この寡黙さとおちゃめさの二面性、いやはや気がつけばすっかり許斐さんのペースにのっかっちゃっていました(笑)。

かつて小学校校舎だった建物を移築したもの。許斐さんご自身も当時通った思い出の建物だそう。

工房の隅でおもむろにコーヒー豆の焙煎を始めた許斐さん(笑)。寡黙さとおちゃめさの二面性(笑)。

焙煎したての深入り豆を挽きcoffeeを入れる許斐さん。雰囲気は老舗喫茶店のマスターですやん(笑)

直火・強火で10分強。深入り焙煎した黒々としたcoffee豆と淹れたてのコーヒー。良い香りです。
1958年、この上天草市の維和島で生まれた許斐さん。小さい頃から絵を描くのが大好きだったそう。九州産業大学芸術学部では油彩画を専攻。卒業後、しばらく美術の先生として働かれましたが、陶芸の道を志し、一念発起。天草の丸尾焼や熊本市の山幸窯の門をたたき、師のもとで修行を積まれました。そして今から34年前の1992年、この故郷である上天草市の維和島で「蔵々窯」で開窯されました。
『若い頃は工房に籠りっきりで根詰めて作品と向き合っていましたが、今はギターを弾いたり、船で出かけて魚釣りを楽しんだり、自分で焙煎してコーヒーを淹れて飲んだりする時間も大切にしています。』

ギターの腕前もまさにプロ並み。なんでも突き詰めるタイプなんでしょうね⁉恐るべし才能です。

自分で船を操縦して海に出て魚釣りを楽しまれているそう。料理上手でもあるそうです。
「温もりのある磁器」をテーマに、独創性の高い作品を次々と世に送り出している許斐さん。素材本来が醸し出す個性豊かな表情を垣間見ることができる、そんな他にはない味わい深い作風が特徴的とも言えます。定番やセオリーに固執することなく、時にはこの自然溢れる故郷の環境に身を任せながら、心地良いと思える時間を大切に過ごすことこそが、許斐さんにとっては創作活動する上で大切なひとときなのかも知れません。その生き方全てが作品作りへとつながっている「蔵々窯」の器たち。天領・天草の時代から脈々と受け継がれてきた焼き物という文化の中に新たな風を吹かす許斐さんの今後に、これからも目が離せません!(^^)!

趣味と磁器の狭間で。その生き方全てが作品へとつながっていく…。そう感じさせる空間です。

手製の革バッグにインスピレーションを受け、無造作に打ち込まれていたリベットも再現したカップ。

海に泳ぐ魚、夕日に赤く染まった島々や波など、この地域をモチーフにした作品も多いそう⁉

許斐さんが作る器には美しさや見る楽しさといった表情豊かなものが多いように感じられます。
〇4月1日から熊本市南区川尻のくまもと工芸会館で「天草陶磁器展」が開催されます。
そんな許斐さんの作品を含めた天草の窯元7か所が揃う「天草陶磁器展」が4月1日から5日までの5日間、熊本市南区川尻にあるくまもと工芸会館2F企画展示室にて開催されます。会場には七窯元の春の新作「酒器」百点と、五千点以上の商品が所狭しと並ぶそうです。皆さん是非お出かけ下さい!(^^)!





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