山下竹輪屋 上天草市『創業100年続く老舗ちくわ屋 若き4代目 山下竹輪屋 山下翔さん 』かたりばvol.3

取材🎤 文章💻 写真📸:太田弘樹
100年続く代々受けつがれる伝統の味 山下竹輪屋 山下翔さん
上天草市大矢野町。登立漁港のすぐ近くにあるのが今回紹介する1921年創業の山下竹輪屋。
海に面したこの地域一帯にはかつて6軒ほどの練り物店が点在してしたそうですが、現在はこのお店のみとなっています。今年で104年目を迎える老舗竹輪屋の若き4代目 山下翔さんに話を伺いしました。
『忙しい中にも楽しそうに働く両親の姿がそこにはありました。』
兄1人姉2人の四人兄弟の末っ子として山下家に誕生した翔さん。
「年末になると私たち子供達も駆り出されて、家族総出で作っていましたね。熊本のおせちには欠かせない旭巻きに使うゆで卵の殻をひたすら剝く作業(笑)。でも手伝って当然というかほんと自然だったですね。いやいやって感じじゃなかったです。親もめっちゃ明るいんですよ、『よし、みんな頑張るぞ~』みたいな感じ。忙しそうなんだけどいつも楽しそうに働いているんですよ、親たちが(笑)!なんか楽しかったですね。」
そんな子供時代のエピソードから、山下竹輪屋がこれまで100年以上も続いている秘訣をちょっとだけ垣間見たような気がしました。ということは翔さん、小さい頃からこの仕事をやりたいと思っていたんですか?
「正直そこまではなかったです(笑)。釣りとかサッカーとかにハマってたし。しかも高校から私、家を出たんです。」
聞けば翔さん、熊本市内の高校に進学し寮生活を。さらに東京の大学へと進まれたそうです。
「ここを出て初めて気づいたんですよね。すぐ近くに海があって食べ物も美味しくて。恵まれてたんだなぁって」
「高校時代、将来のこと考えたとき、ふと実家のことが気になったというか。兄や姉も他の仕事をやっていて。親父からは『もう自分たちの代で閉めようと思う』って話を聞いて。『じゃあ俺がやるよ』みたいな感じになっちゃって。それでまずは東京の大学に進学しました(笑)。いろいろ経験して吸収しておこうかなぁと思って。」
将来のことを考えて、家業を継いだ時にきっと役に立つと思い、大学では経営学を専攻したり、バイト先も飲食店で働いて包丁の扱い方や調理スキルなど進んで身につけたそうです。翔さん、将来のこともきちんと考えていて、ほんと素晴らしい!
東京での誘惑に負けず、初志貫徹、大学卒業と同時に山下竹輪屋で働く事を選ばれました。

『仕事は見て覚える。やって試行錯誤の日々。』
実際に実家でお仕事を始めてみていかがでしたか?
「いや~大変でした。まずは大学時代の夜型生活から180度ごろっと変わって、早朝4時起きの超朝型の日々。このリズムに慣れるまでがきつかったですね~。今はもう慣れましたけど。」
「あと親父が職人肌で。『仕事は見て覚えろ』みたいな感じ。「これはこうしてああして」とか、言葉で教えてもらったことがない(笑)。だからひたすら見て覚えて。実際にやってみて試行錯誤して。ほんとそんな感じの日々がしばらく続きました。」
ええっ(笑)。令和の時代に昭和な感じでしたね!?
「でも今思うと、その試行錯誤したお陰でしっかりと(知識や技術が)身についたと思います。今では揚げる前の生地をみたり、ちょっと触ったりするだけで、その状態がどんな感じか分ったりするので。それによって揚げ方を変えたりしています。仕上がり具合が大体わかるんですよ。」
うむうむ、職人の世界って実に奥深いですね~。『教えないことが学びへとつながる』のですね。

『週休二日制。仕事効率を上げて勤務時間を5時間短縮しました。』
実家で働きだして納得のいく商品を作れるようになった翔さんが、次に取り組んだのが勤務環境の改善でした。
「ありがたいことに、うちの工房には、練り物の仕事で必要な機械や道具が全てそろっているんです。しかもそのどれもが立派なものばかりで。ほんと先代たちに感謝です。でもちょっとだけ作業の効率が悪いなぁって気づいたんです。当時は週休1日で、朝4時くらいから夕方5時まで。体力的にもヘトヘトになるし。」
そこで翔さんはこれまでの全ての作業をいちから見直したと言います。生地を作る作業や機械を動かす順番、工程などを組み直し、無駄な時間を省いて、とにかく作業効率を飛躍的に上げていったそうです。その結果、
「配達も含め午前中で全ての作業が終わるようになりました。週休二日制も導入です(笑)。」
翔さん、スゴすぎますって!!改善の天才ですか(笑)。両親もさぞ喜ばれたでしょうね!?
「あまりの短縮ぶりに唖然としてうなだれてました(笑)。今はとても感謝してくれています。」
『素材にこだわり、味に妥協せず。真心を込めてこれからも。』
作業を効率化しても決して変えなかったのが、初代から続く商品に対する想いでした。
「素材にこだわり味に妥協せず。手作りだからこそできる想いのこもったぬくもりのある商品。」
新商品を作るよりも今ある商品を大切にし、より高みに持っていくことこそが翔さんの矜持だと言います。

結婚して3人の子供に恵まれた翔さん。特に3人目は今年2月に生まれたばかりだそうです。
「今の自分があるのは、妻のお陰でもあります。大学時代に出会って、この上天草に一緒に来てくれました。山下竹輪屋を継ぎたいという私の想いを理解してくれて、なによりも一番近くにいて支えてくれています。今は妻なしでは仕事がはかどらないほど(笑)。育児もある中、仕事も頑張ってくれています。本当に感謝です。」

創業104年を迎える山下竹輪屋 4代目(候補)の山下翔さん真未さんご夫婦
まだ20代の翔さんの中には代々受け継がれてきた商品に対する想いと家族への感謝の気持ちで満ち溢れていました。次の100年もきっとこの想いは変わらず受け継がれていくのでしょうね。
翔さん、これからも美味しい練り物を作って下さいね。私、太田も全力で応援しています。

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