White house(ホワイトハウス)上天草市『あの思い出のお店「White house」が帰ってきました。大阪育ちの姪っ子が店主となって、まずはひと夏の限定復活です。』イチオシ広場vol.21

取材🎤文章💻撮影📸:太田弘樹



〇あのWhite houseが営業を再開するって⁉
上天草市大矢野町の国道沿いに、かつて地元の人々や観光客が足しげく通った一軒のお店がありました。ログハウス風の白い建物に、木のぬくもりが漂う店内。暖炉のある落ち着いた空間で、手作りの料理やケーキを味わいながら、家族や友人とゆっくり過ごすことができる場所――それが「White house(ホワイトハウス)」でした。閉店してから、いくつもの季節が過ぎたのだろうか。あの白い建物の前を通るたびに、懐かしい記憶を思い出す人も少なくなかったはずです。

暖炉があったかつての店内の様子。
そんな中、「あのWhite houseが営業を再開するらしい」という知らせが飛び込んできました。居ても立ってもいられず、私はすぐに取材を申し込み、久しぶりにその扉をくぐることに。店内に一歩入ると、白い窓枠から差し込むやわらかな光、木目の床、入口近くの個室、そしてかつて公衆電話が置かれていた電話ボックス跡まで、記憶の中にあった風景がそこには広がっていました。懐かしさと新しさが重なり合うその場所で迎えてくれたのが、新しい店主であり、前オーナーの姪にあたる小幡美咲さんです。「恥ずかしいから」と照れ笑いを浮かべ、マスク姿のまま写真撮影に応じてくださいました。

〇「海の近くで暮らしたい」—大阪育ちの店主・小幡美咲さんの決断。
『うちのお父さんが大矢野町出身で、ここの前オーナーとは兄弟なんです。』
大阪生まれ大阪育ちの美咲さんは、言葉の端々に明るい関西弁がにじむ、朗らかな雰囲気の方です。お父様は大矢野町の出身で、White houseの前オーナーとは兄弟。幼い頃、家族で里帰りをするたびに、この店を訪れるのが楽しみだったといいます。お父様のご友人家族と集まる時は、決まって入口近くの個室へ。テーブルいっぱいに料理が並び、大人たちの笑い声が響き、子どもだった美咲さんにとってこのお店は、ただ食事をする場所ではなく、ふるさとのぬくもりを感じる特別な場所でした。

転機となったのは、昨年亡くなられたお父様のふるさとであるこの上天草を、久しぶりに訪れたことでした。前オーナーのおじ様が営む西目海水浴場近くのペンションで数日を過ごすうち、目の前に広がる海、ゆったり流れる時間、人との距離の近さに、心が少しずつほぐれていったそうです。大阪での暮らしとは違う、潮風の匂いがする毎日。その心地よさに触れるうちに、ある想いがはっきりと形になって膨らんでいったと言います。
『そろそろ自分で何か始めてみたいと思っていたんです。やるなら海の近くがいいなって。』
前職は、運送関係のお仕事でした。荷物を運び、人知れず社会を支える仕事をしてきた美咲さんですが、心のどこかに「そろそろ自分の場所で、自分らしく何かを始めたい」という思いがあったそうです。そこでたどり着いたのが、子どもの頃の思い出が詰まった大好きだったお店「White house」でした。前オーナーであるおじさんに直談判し、今年3月に上天草へ移住。閉まっていたお店をもう一度動かすため、掃除や片付け、設備の確認、仕入れの準備など、ひとつひとつ手探りで進めてきました。
〇初めての飲食店経営。前オーナーも常連さんも皆が支える再スタート。
『再開にあたって、(前オーナーの)おじが全面的に応援してくれました。店内の片付けや掃除、椅子のクッションの張り替えから床のワックスがけまで、色々と手伝ってくれて。感謝の気持ちで一杯です。』

飲食店の経営は初めてという美咲さん。けれど、再開初日から昔ながらの常連さんや知り合いが次々と訪れ、店内には久しぶりの再会を喜ぶ声が溢れたといいます。仕入れも調理も、基本的には美咲さんが自ら担う手作りのお店。慣れないことの連続で、忙しさに追われる時間も多いそうですが、その表情には不安だけでなく、店を開けることができた喜びと、訪れる人への感謝の気持ちが滲んでいました。

営業は朝7時から。モーニングには、おにぎりセットやトーストセットを用意し、ランチにはハンバーグ、カレー、おむすびセットなど、どこかホッとするメニューが並びます。観光の途中に立ち寄る人、仕事前に朝食をとる人、懐かしさに誘われて訪れる人。それぞれの時間に寄り添えるようにしたそうです。まずはできることから少しずつ。今後はデザート系のメニューも加え、店の表情をゆっくり育てていきたいと話してくれました。
『昔おじさんがやっていた時みたいなお店とまではいきませんが、自分が出来ることを頑張ります。』
かつて多くの人に愛された名店「White house(ホワイトハウス)」。しかし、時代は変わり、周囲には新しい店も増え、人の流れも昔とは少し違っています。だからこそ美咲さんは、今回の再開をまず3か月間の「お試し営業」と位置づけています。この夏の営業を通して、お客さんの反応や自分自身のペースを確かめ、来年以降の本格的な営業再開に向けて、無理のない形を探っていく考えです。


〇「もう、いったれ〜。」と不安を笑い飛ばして、まずは3ヶ月間の限定営業です。
美咲さんにとって飲食店経営はまったく新しい挑戦です。不安はないのかとお尋ねすると、少し笑いながら関西弁まじりにこう答えてくださいました。
『考えないようにしてるんです。もう、いったれ〜って感じ(笑)。小さい頃、ここに来るのが私にとっても本当に楽しみだったんです。美味しい料理があって、みんなとワイワイしゃべって。そんな風に皆さんにもこのお店を使ってもらえたら嬉しいですね。とにかくまずは3か月間、頑張ります。』
夏のハイシーズンを迎える上天草で、White houseはまず3か月間、限定営業として新しい一歩を踏み出します。懐かしい人にとっては記憶をたどる場所として、初めて訪れる人にとっては海辺の町で出会う小さな憩いの場として。かつて多くの笑顔が集まった白い建物に、今年の夏、また新しい物語が静かに始まりました。




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